ローンが残っていても家は売却可能です。ただし手順や注意点を誤ると損をするリスクも。本記事では、残債のある家を適正に売却する方法と、知っておきたい重要ポイントを詳しく解説します。
CONTENTS
この記事の目次
- 1. 住宅ローンが残っていても、家は売れる時代
- 2. 住宅ローン返済中の「家の売却」が一般的になりつつある理由
- 3. 売却の基本ステップと必要書類
- 3-1. 売却の基本ステップ
- 3-2. 売却に必要な主な書類一覧
- 3-3. 書類に不備があると売却がストップする可能性も
- 4. 売却価格と残債のバランスで変わる対応方法
- 4-1. 売却価格が残債を上回る場合:スムーズな売却が可能
- 4-2. 見極めのポイント:査定と残債確認をセットで行う
- 4-3. 損得だけでなく、長期的視点での判断を
- 5. 任意売却とは何か?避けるための判断基準とは?
- 5-1. 任意売却とは?競売との違い
- 5-2. 任意売却が必要になるタイミング
- 5-3. 任意売却を避けるための3つの判断基準
- 5-4. 任意売却は「最終手段」、避けるには早めの行動を
- 6. 住宅ローン返済中の売却は「正しい理解と準備」がカギ
住宅ローンが残っていても、家は売れる時代
「ローンが残っている家は売れないのでは?」と不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。しかし、実際には住宅ローン返済中でも家を売却することは可能であり、近年ではそれが一般的な選択肢のひとつになりつつあります。
背景には、ライフスタイルの変化や家計の見直しなど、多様な事情による「住み替え」や「資金調整」のニーズの増加があります。たとえば、広すぎる家からコンパクトな住まいへの転居や、ローン負担の軽減を目的とした売却などが代表例です。
とはいえ、ローンが残っている状態での売却には、通常の不動産売却とは異なる手続きや注意点が存在します。うまく進めるためには、あらかじめ基本的な知識と対策を押さえておくことが大切です。
本記事では、そうした方に向けて、ローン返済中の売却方法、リスクを避けるためのポイント、そして高く売るための工夫まで、専門家の視点で丁寧に解説していきます。
住宅ローン返済中の「家の売却」が一般的になりつつある理由
まだローンが残っているけれど、家を売りたい」と考える人は、珍しくありません。実際、住宅ローン返済中に家を売却するケースは年々増加傾向にあります。
背景には、少子高齢化や共働き世帯の増加、テレワークの定着といったライフスタイルの多様化があります。国土交通省の「令和5年度 住宅市場動向調査」によると、住み替え理由として最も多いのは「現在の住宅が古くなった」や「より広い・便利な家に住みたい」といった前向きな動機で、 約47%の人が「住み替えを目的とした住宅取得」を行っていると報告されています。
国土交通省HP
* 参考:国土交通省|令和5年度 住宅市場動向調査
また、金融機関のローン制度も柔軟になり、「住み替えローン」などを活用すれば、旧居の ローンが残っていても 新居の購入と並行して売却手続きを進めることが可能です。
こうした流れの中で、住宅ローン返済中の売却は、もはや特別な選択肢ではなく「ごく一般的な手段」となりつつあります。
本記事では、以下のポイントを中心に、専門知識がなくても理解できるようにプロの視点から丁寧に解説していきます。
■ 売却の基本ステップと必要書類
■ 売却価格と残債のバランスで変わる対応方法
■ 「任意売却」とは何か?避けるための判断基準とは?
複雑に感じる住宅売却も、正しい知識があれば安心して進められます。まずは、ローンが残っている家でも売却する方法を、次章から詳しく見ていきましょう。
売却の基本ステップと必要書類
住宅ローンが残っていても家を売ることは可能ですが、安心・確実に手続きを進めるためには、基本的な流れと必要な書類を理解しておくことが重要です。この章では、売却までの一般的なステップと、各段階で必要となる書類についてわかりやすくご説明します。
売却の基本ステップ
不動産売却は、段階を踏んで進めることでトラブルや損失のリスクを回避できます。住宅ローン返済中の売却も、基本の流れは通常の売却と大きく変わりません。
Step 1:売却相談と相場調査
まずは、不動産会社に相談し、売却に関するアドバイスを受けましょう。現在の相場を把握するためには、複数社から査定を受けるのがベストです。自宅周辺の売却事例、築年数、間取り、路線価などをもとに、適正な価格が提示されます。
不動産情報ライブラリ
* 参考:国土交通省「不動産情報ライブラリ」売買価格の事例が地域別に確認できます。
Step 2:住宅ローン残高の確認
現在のローン残高を確認し、売却価格で完済できるかをチェックしましょう。残高は金融機関に問い合わせればすぐに教えてもらえます。また、抵当権の内容や完済条件の確認もこの段階で重要です。
Step 3:媒介契約の締結
信頼できる不動産会社を選んだら、「媒介契約(ばいかいけいやく)」を結びます。媒介契約には以下の3種類があります。
■ 専属専任媒介契約:1社のみに依頼し、自己発見取引も不可(毎週の報告義務あり)
■ 専任媒介契約:1社に依頼、自己発見取引は可能
■ 一般媒介契約:複数社への同時依頼が可能(報告義務なし)
売主の状況に応じて、最適な契約形態を選びましょう。
Step 4:売却活動の開始
広告やポータルサイト掲載、内覧対応などを通じて、買主を探します。住宅ローンが残っていても、買主には特に不利益はないため、通常どおり売却活動を進められます。
Step 5:売買契約の締結
買主が決まったら、売買契約を締結します。手付金を受け取り、契約書に基づいて引渡しまでの段取りを進めます。ローン残債が売却代金で完済できる見込みであることが大前提となります。
Step 6:ローン完済と抵当権抹消
売却代金を受け取り、住宅ローンを一括返済します。これにより、物件に設定された抵当権が抹消され、所有権移転が可能になります。
Step 7:物件引渡しと登記手続き
買主へ鍵を引き渡し、登記変更の手続きを完了すれば売却は完了です。不動産会社や司法書士がサポートしてくれるため、難しい手続きもスムーズに進みます。
売却に必要な主な書類一覧
売却活動に入る前後で準備が必要な書類は意外と多いため、早めにそろえておくとスムーズです。一部書類に関しては不動産会社が代理で取得する事も可能ですのでご相談ください。
売却前に必要な書類
書類名 | 内容 |
---|---|
登記簿謄本(登記事項証明書) | 所有者・抵当権の有無を確認するために必要 |
登記識別情報通知書(権利証) | 売主の所有権を証明する書類 |
固定資産税納税通知書 | 年間の固定資産税額を確認する際に使用 |
住宅ローン残高証明書 | 残債額の確認に必須 |
建築確認済証・検査済証 | 新築時に発行された建物の法的証明書類(必要に応じて) |
売買契約書(購入時のもの) | 過去の取引内容を確認するために利用されることがある |
間取り図・設備仕様書 | 内覧時に買主へ提供できると好印象 |
売買契約締結時に必要な書類
書類名 | 内容 |
---|---|
身分証明書(運転免許証など) | 売主本人であることの確認に使用 |
実印・印鑑証明書(3か月以内) | 契約書類への捺印と本人確認に必要 |
銀行口座情報 | 売却代金の振込先として提出 |
引渡し時に必要な書類
書類名 | 内容 |
---|---|
鍵一式 | 現地立会いのもと、買主に引き渡す |
抵当権抹消登記申請書類(金融機関から発行) | 司法書士を通じて提出される |
管理規約・使用細則(マンションの場合) | 管理会社や管理組合に関する情報共有のために必要 |
書類に不備があると売却がストップする可能性も
不動産売却において、書類の不備は大きなトラブルの原因になります。特に「権利証(登記識別情報)」や「ローン残高証明書」は、買主のローン審査や抵当権抹消手続きに直結するため、 万が一紛失している場合は早めに不動産会社や司法書士に相談してください。
売却価格と残債のバランスで変わる対応方法
住宅ローン返済中に家を売却する場合、「売却価格」と「ローン残債」のバランスが非常に重要になります。この差額によって、売却の方法や必要な手続きが大きく変わるため、自分がどのパターンに当てはまるかを正しく理解することが第一歩です。
売却価格が残債を上回る場合:スムーズな売却が可能
売却益でローンを完済できる理想的なケース
このケースでは、売却で得た代金から住宅ローンを完済することができます。金融機関の抵当権もスムーズに抹消できるため、売却手続きは一般的な流れで進行します。
たとえば以下のような例が該当します。
■ 売却価格:3,500万円
■ ローン残債:3,000万円
■ 差額:+500万円(諸費用も含め完済が可能)
プラスになった差額の使い道
残債よりも高く売却できた場合、差額分は次の住まいの頭金や引っ越し費用に充てることが可能です。また、住宅ローン控除の適用や、譲渡所得課税の特例(3,000万円特別控除など)を活用することで節税につながる可能性もあります。
国税庁HP
* 参考:国税庁「マイホームを売ったときの特例」
売却価格が残債を下回る場合:資金調整がカギに
自己資金で不足分を補填できれば売却可能
このケースでは、売却金額だけではローンを完済できないため、不足額を別途補う必要があります。
【例】
売却価格:2,500万円
ローン残債:3,000万円
差額:▲500万円(追加返済が必要)
自己資金に余裕がある方は、不足分を現金で支払うことで通常通りの売却が可能です。ただし、金融機関への相談・承認が必要になります。
足りない場合は「任意売却」も選択肢に
自己資金で不足分を用意できない場合、「任意売却」という制度を利用する選択肢もあります。任意売却とは、金融機関の合意を得たうえで、市場価格に近い金額で不動産を売却する手法です。
■ 競売と違い、市場価格に近い金額で売却できる
■ 住宅ローン以外の債務も整理できることがある
■ 債務整理や自己破産を回避する手段になる
任意売却は「信用情報に影響が出る」などの注意点もあるため、慎重な判断と専門家のサポートが必要です。
見極めのポイント:査定と残債確認をセットで行う
査定価格を早めに把握することが第一歩
売却を検討し始めたら、まず不動産会社に物件の「査定」を依頼しましょう。査定価格がわかれば、ローン残高との差額も明確になります。
複数社に査定を依頼することで、市場価格の傾向も掴みやすくなります。
ローン残債は「返済予定表」か金融機関に確認
売却時に必要なローン残債は、毎月の「返済予定表」または住宅ローンを借りている金融機関に問い合わせれば確認できます。特に繰上返済や変動金利を利用している方は、残債が想定よりも減っている可能性もあります。
ケース別:最適な売却アプローチまとめ
状況 | 売却の可否 | 必要な手続き | ポイント |
---|---|---|---|
売却価格 > ローン残債 | 可能 | 抵当権抹消・一括返済 | 理想的なパターン |
売却価格 = ローン残債 | 可能 | 同上 | 諸費用の負担有り |
売却価格 < ローン残債(補填可能) | 可能 | 不足分の現金返済 | 売却前に資金計画を立てることが重要 |
売却価格 < ローン残債(補填不可) | 限定的 | 任意売却・金融機関の承認 | 信用情報や生活再建の影響に注意 |
損得だけでなく、長期的視点での判断を
「売却価格と残債のバランス」は、住宅売却の成否を分ける大きな要素です。しかし、単なる損得勘定だけで判断するのではなく、家計やライフプラン全体を見通した上での選択が重要です。
不安な場合は、不動産会社・金融機関・ファイナンシャルプランナーなどの専門家に早めに相談し、最善の対応策を見つけましょう。対応方法を理解しておけば、住宅ローン返済中でも前向きな住み替えや再スタートが可能になります。
株式会社ハウスセイラーズは、売却を強みとした1991年創業の総合不動産会社です。
足立区・北区をメインとした不動産で売出後半年以内に約90%の方が売却に成功しています。
もちろんローンが残った状態での売却実績も多数ありますので売却をご検討の方は、是非一度ご相談ください。
任意売却とは何か?避けるための判断基準とは?
住宅ローンの返済が難しくなった場合、 「任意売却」という選択肢が存在します。競売に比べると柔軟性があり、多くのケースで債務者にとって有利ですが、できれば選ばずに済ませたいのが本音でしょう。この章では、任意売却の意味と回避するための判断基準について解説します。
任意売却とは?競売との違い
任意売却の定義と仕組み
任意売却(にんいばいきゃく)とは、住宅ローンの返済が困難になった債務者が、金融機関の合意を得て、自宅を市場価格で売却する手続きのことです。
通常、住宅ローンを滞納すると金融機関が抵当権を行使し、裁判所を通じて「競売」にかけますが、 任意売却はそれを回避し、債務者の意思で物件を売却できる仕組みです。
任意売却と競売の違い
比較項目 | 任意売却 | 競売 |
---|---|---|
売却価格 | 市場価格に近い | 市場価格より大幅に低くなる傾向あり |
生活への影響 | 引越し日や条件を交渉できる | 強制退去となる可能性がある |
信用情報への影響 | 債務整理として事故情報が登録される | 同様にブラックリストに登録される |
売却までの期間 | 比較的短期間で売却可能 | 裁判所の手続きが必要で時間がかかる |
任意売却が必要になるタイミング
ローンの滞納が続いたとき
金融機関が任意売却を認めるのは、ローンの滞納が数カ月以上に及んだ場合です。通常は3カ月〜6カ月程度の延滞で「期限の利益」が喪失され、債権回収が法的手段に進む前段階として、任意売却の打診が始まります。
残債を完済できないとき
売却価格よりローン残債が大きく、自己資金で差額を補填できない場合にも、任意売却が検討されます。自己破産や競売よりも回収率が高いため、債権者(金融機関)にとっても合理的な選択肢です。
任意売却を避けるための3つの判断基準
① 売却にかかる期間を逆算する
住宅ローンの支払いに不安を感じたら、まず 「売却にどれくらい時間がかかるか」をシミュレーションしておきましょう。一般的に、販売開始から成約までは3〜6カ月が平均とされます。(* 2023年 東日本不動産流通機構のデータより)。
そのため、滞納が始まる前の段階から動き出すのが理想です。
② 査定価格と残債の差を早期に把握する
売却を検討する際は、複数の不動産会社に査定を依頼し、現在の市場価格を把握しましょう。あわせて、自身のローン残高を確認し、「売却価格 ≧ 残債」であるかを判断します。
もし「残債 > 売却価格」の場合でも、自己資金やローンの借換え、親族からの援助などで補填可能であれば、 任意売却を避けられる可能性があります。
③ 早期に専門家に相談する
ローン返済が困難な状況では、個人での判断はリスクが伴います。以下のような専門家に相談することで、任意売却に進む前の選択肢を見つけやすくなります。
■ 不動産会社(売却・査定)
■ 弁護士(法的手続き)
■ 住宅ローン相談員・ファイナンシャルプランナー
■ 任意売却支援団体
選定の際は実績や過去の対応事例などを確認し、信頼できるパートナーを見つけることが重要です。
任意売却は「最終手段」、避けるには早めの行動を
任意売却は、競売を回避できる点で非常に有効な手段ですが、信用情報への影響や生活再建の負担があることから、可能であれば避けるべき手段といえます。
任意売却を避けるには、
■ 不安を感じた段階で売却の準備を始めること
■ 査定価格とローン残高の差を把握すること
■ 専門家の意見を早期に取り入れること
この3つを押さえるだけでも、大きな違いが生まれます。
住宅ローン返済中の売却は「正しい理解と準備」がカギ
住宅ローンが残っている家でも、条件さえ整えば問題なく売却できます。
大切なのは、次の3点をしっかり押さえることです。
■ 売却価格と住宅ローン残債のバランスを確認すること
→ 売却価格が残債を上回ればスムーズな完済が可能。下回る場合は、自己資金の準備や金融機関との相談が必要です。
■ 任意売却になる前に、早期に行動すること
→ 支払いが厳しくなる前に売却を進めることで、競売などのリスクを回避できます。
■ 信頼できる不動産会社に相談すること
→ 複雑な手続きや金融機関との交渉も、不動産のプロがいれば安心して進められます。
今後の住まい選びや資金計画を前向きに進めるためにも、まずは現状を正しく把握し、早めの相談・行動を心がけましょう。不安や疑問がある方は、一人で抱え込まず、経験豊富な不動産の専門家へ気軽に相談することをおすすめします。
お悩みの方は、不動産のプロ「ハウスセイラーズ」へご相談ください
住宅ローンが残っている家の売却は、専門的な知識と的確な判断が求められる場面も少なくありません。
私たち株式会社ハウスセイラーズは、1991年の創業以来、東京都内を中心に**「安心・安全な総合不動産サービス」**を提供し、地域に根ざした景観づくりや街づくりに取り組んできました。
売却後半年以内の成約率は約90%、売出価格と成約価格の平均乖離率5.3%という実績は、市場を正確に見極めた価格設定と、独自のデータベースを活用した多角的な売却戦略の証です。
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