親が認知症になり、老人ホームの入居費用や介護費用を確保するために、実家の売却を検討するご家族は少なくありません。
しかし、「認知症と診断されたら家を売れない」「子どもが委任状を用意すれば売却できる」とは限りません。
認知症の親の不動産を売却できるかどうかは、診断名だけではなく、本人が売却の内容や結果を理解し、自分の意思で判断できる状態かどうかによって変わります。
この記事では、認知症の親の家を売却する方法を判断能力の状態別に整理し、成年後見制度や家族信託、家庭裁判所の許可、売却費用や税金について解説します。
CONTENTS
この記事の目次
- 1. 認知症の親の家は売却できるのか
- 1-1. 本人が売却内容を理解できる場合
- 1-2. 本人に判断能力はあるが、手続きが難しい場合
- 1-3. すでに家族信託や任意後見契約がある場合
- 1-4. 判断能力が低下し、事前の契約もない場合
- 2. 認知症の親の家を子どもが勝手に売れない理由
- 3. 認知症の親に意思能力があるかはどう確認するのか
- 4. 認知症の親の不動産を売却する主な方法
- 4-1. 親本人が売主となって売却する
- 4-2. 家族が代理人となって売却する
- 4-3. 成年後見制度を利用して売却する
- 4-4. 家族信託を利用して売却する
- 5. 成年後見制度を利用して家を売る場合の注意点
- 5-1. 後見人になれば自由に売却できるわけではない
- 5-2. 居住用不動産には家庭裁判所の許可が必要
- 5-3. 成年後見制度は家を売ったら終わる制度ではない
- 6. 認知症の親の家を売却する流れ
- 7. 老人ホームの費用を確保するために家を売る場合
- 8. 足立区・北区周辺におけるハウスセイラーズの売却実績
- 8-1. 竹の塚ハイツ|1972年築・2LDK・750万円で成約
- 8-2. 足立区興野2丁目の中古戸建て|2002年築・4LDK・2,530万円で成約
- 8-3. 足立区東伊興4丁目の土地|107.34平方メートル・3,400万円で成約
認知症の親の家は売却できるのか

結論からお伝えすると、親が認知症と診断されていても、直ちに不動産を売却できなくなるわけではありません。
重要なのは、売買契約を締結する時点で、本人が「どの不動産を、いくらで、なぜ売るのか」「売却後にどこで生活するのか」「売却代金を何に使用するのか」といった内容を理解できるかどうかです。
民法では、法律行為を行った時点で意思能力がなかった場合、その法律行為は無効になると定められています。そのため、認知症という診断の有無だけでなく、不動産売却という具体的な契約を理解できる状態かを確認する必要があります。
親の状態によって、主な売却方法は次の4つに分かれています。
本人が売却内容を理解できる場合
本人が不動産売却の意味や条件を理解し、自分の意思を伝えられる場合は、本人を売主として通常の不動産売却を進められる可能性があります。
認知症の症状には個人差があり、軽度の段階では日常生活や契約内容を十分に理解できる方もいます。ただし、不動産売買では、不動産会社だけでなく、所有権移転登記を担当する司法書士なども本人確認や意思確認を行います。
売買契約時だけでなく、残代金決済や所有権移転の時点でも本人の意思確認が必要になるため、早い段階で 司法書士を含めて相談しておくことが大切です。
本人に判断能力はあるが、手続きが難しい場合
本人が売却内容を理解できるものの、入院中で外出できない、施設から移動できない、身体的な理由で手続きを行うことが難しい場合は、家族などを代理人にする方法があります。
ただし、家族であれば自動的に代理権を持つわけではありません。本人に判断能力がある状態で、売却する不動産や代理人へ与える権限を明確にした委任状などを作成する必要があります。
委任する内容には、 売買契約の締結、価格や条件の交渉、代金の受領、登記手続きなど、どこまでの権限を与えるのかを明確にします。
本人の判断能力が十分なうちは、財産管理等委任契約を活用し、将来の判断能力低下に備えて任意後見契約と組み合わせる方法もあります。
すでに家族信託や任意後見契約がある場合
親の判断能力が低下する前に家族信託を設定している場合は、 信託契約の内容に不動産を売却する権限が含まれていれば、受託者が売却を進められる可能性があります。
ただし、家族信託を設定していれば、必ずどの不動産でも自由に売却できるわけではありません。
対象となる不動産が信託財産に含まれているか、信託登記が行われているか、受託者に売却権限が与えられているか、売却代金をどのように管理する契約になっているかを確認する必要があります。
任意後見契約についても、契約を結んだだけで直ちに任意後見人が売却できるわけではありません。本人の判断能力が低下した後、家庭裁判所によって 任意後見監督人が選任されると、任意後見契約の効力が生じます。
判断能力が低下し、事前の契約もない場合
本人が売却内容を理解できず、家族信託や有効な任意後見契約などもない場合は、法定後見制度の利用を検討します。
成年後見制度は、 認知症などによって判断能力が十分ではない人の財産管理や契約を支援する制度です。家庭裁判所が成年後見人、保佐人、補助人などを選任し、与えられた権限に基づいて本人を支援します。
本人の居住用不動産を売却する場合は、後見人などが選任された後、原則として家庭裁判所の許可も必要です。
認知症の親の家を子どもが勝手に売れない理由

親名義の不動産は、親本人の財産です。子どもが固定資産税を支払っている場合や、親の介護を行っている場合でも、不動産の所有権が子どもへ移るわけではありません。
そのため、 親の実印や印鑑登録証明書、権利証などを保管していても、それだけで子どもが親名義の家を売却することはできません。
本人に判断能力がない状態で、本人名義の売買契約書へ署名や押印を行った場合は、契約が無効になる可能性があります。また、子どもが親の代理人として契約する場合も、本人から有効な代理権を与えられていなければ、契約を進めることはできません。
「親も売却を希望していたはず」「介護費用のためだから問題ない」という事情だけでは、代理権の代わりにはならないため注意が必要です。
認知症の親に意思能力があるかはどう確認するのか

意思能力の有無は、単に日常会話ができるかどうかだけで判断するものではありません。
不動産売却では、本人が売却する物件を認識しているか、売却価格や売却理由を理解しているか、売却すると所有権を失うことを理解しているかなどを確認します。
また、売却後の住まいや、受け取った代金の使い道について本人が理解しているかも重要です。本人が家族の説明にうなずくだけで、 自分の言葉では売却内容を説明できない場合や、確認するたびに回答が変わる場合は、慎重な判断が必要になります。
不動産会社だけで判断せず、司法書士や弁護士、必要に応じて医師にも相談しながら、売却を進められる状態かを確認しましょう。
認知症の症状は変化することがあるため、「数か月前は売却の意思を確認できた」というだけでは十分でない場合があります。売買契約から引き渡しまでの期間も考慮し、本人確認を行う司法書士と早めに情報を共有することが重要です。
認知症の親の不動産を売却する主な方法

親本人が売主となって売却する
本人に意思能力がある場合は、通常の不動産売却と同じように、本人が不動産会社と媒介契約を締結し、購入希望者と売買契約を結びます。
本人が施設へ入居している場合でも、不動産会社や司法書士が施設を訪問し、本人確認や契約手続きを行える場合があります。
本人が売却内容を理解しているうちに進めることで、売却価格や売却時期、売却後の資金の使い方など、本人の希望を反映しやすくなります。
ただし、売却を急がせたり、 家族が回答を誘導したりしないよう注意が必要です。本人の意思を尊重し、理解できる言葉で説明しながら進めましょう。
家族が代理人となって売却する
本人に判断能力があり、本人の意思によって代理権を与えられる場合は、家族などが代理人として売却手続きを行える可能性があります。
委任状には、対象となる 不動産を特定し、売却価格の決定、売買契約、代金の受領、登記手続きなどの権限を記載します。ただし、委任状があっても、司法書士や不動産会社が本人へ直接意思確認を行うことがあります。
委任状を作成した時点で本人に判断能力がなかった場合や、委任内容が曖昧な場合は、代理による売却を進められない可能性があります。
インターネット上のひな型だけで作成せず、売却を依頼する不動産会社や司法書士へ事前に確認しましょう。
成年後見制度を利用して売却する
本人の判断能力が低下している場合は、家庭裁判所へ後見・保佐・補助開始の申立てを行います。家庭裁判所は、本 人の判断能力や財産状況、家族関係などを確認し、本人を支援する人を選任します。
家族が後見人候補者として申立書へ記載されていても、必ず家族が選任されるとは限りません。事案によっては、司法書士や弁護士などの専門職が選任される場合があります。
後見人に選任された後も、本人の財産を自由に処分できるわけではありません。後見人は、本人の利益のために財産を管理し、不動産売却が本当に必要か、 売却価格が適正か、売却後の生活資金が確保されているかなどを確認する必要があります。
家族信託を利用して売却する
家族信託は、親が元気なうちに、 特定の財産の管理や処分を信頼できる家族などへ託す仕組みです。たとえば、親を委託者兼受益者、子どもを受託者とし、親が所有する自宅を信託財産に含めておく方法があります。
契約内容に不動産の売却権限が定められ、必要な信託登記が行われていれば、親の判断能力が低下した後も、受託者が売却手続きを進められる可能性があります。
ただし、家族信託は、親の判断能力が低下してから自由に設定できる制度ではありません。
家族信託も契約であるため、契約内容を理解できる段階で手続きを行う必要があります。すでに本人が契約内容を理解できない状態であれば、新たに家族信託を設定することは難しくなります。
また、家族信託は主に財産管理の仕組みであり、 介護施設への入所契約や医療・福祉に関するすべての手続きを代理できる制度ではありません。必要に応じて、任意後見や法定後見との併用を検討します。
成年後見制度を利用して家を売る場合の注意点

後見人になれば自由に売却できるわけではない
成年後見人は、本人の代理人として財産管理を行いますが、家族の都合や相続対策だけを目的に不動産を売却することはできません。
売却代金を老人ホームの入居費用や介護費用、医療費、生活費などに充てる必要がある場合は、本人の利益につながる売却として検討されます。
一方で、子 どもへ財産を分配するため、相続税を減らすため、家族の住宅購入資金へ使用するためといった目的は、本人の利益と認められにくい可能性があります。
売却後の代金も本人の財産です。後見人や家族の口座へ自由に移すことはできず、本人の財産として管理します。
居住用不動産には家庭裁判所の許可が必要
成年後見人などが本人の居住用不動産を売却する場合は、家庭裁判所へ居住用不動産処分許可の申立てを行います。
裁判所の案内では、売却の必要性を示す資料として、売買契約書の写し、不動産会社が作成した査定書、評価証明書、登記事項証明書などを提出することが示されています。
家庭裁判所は、売却の必要性や本人の生活状況、売却価格の妥当性、売却後の資金計画などを確認します。売却価格が相場より大幅に低い場合や、売却する必要性が十分に説明されていない場合は、追加資料を求められることがあります。
そのため、家庭裁判所へ申し立てる前に、 周辺の成約事例を踏まえた不動産査定を受け、売却理由と資金計画を整理しておくことが重要です。
成年後見制度は家を売ったら終わる制度ではない
成年後見制度は、不動産を売却するためだけの一時的な手続きではありません。一度成年後見人が選任されると、原則として本人の判断能力が回復するか、本人が亡くなるまで制度が続きます。
後見人は、不動産売却後も預貯金や生活費を管理し、家庭裁判所へ定期的に財産状況を報告。
専門職の後見人が選任された場合は、本人の財産から報酬が支払われる可能性もあります。 東京家庭裁判所も、後見人等が事務内容に応じて本人の財産から報酬を受ける場合には、報酬付与の申立てが必要であると案内しています。
不動産を売却するためだけに成年後見制度を利用するのではなく、売却後を含めた本人の財産管理全体を考えて判断しましょう。
認知症の親の家を売却する流れ

最初に、不動産の名義と本人の判断能力を確認します。登記事項証明書で所有者を確認し、本人が売却内容を理解できる状態か、すでに家族信託や任意後見契約があるかを整理します。
次に、不動産会社へ査定を依頼します。成年後見制度を利用する場合でも、不動産査定は早い段階で行えます。周辺の成約事例や競合物件を調査し、現在の市場で売却できる価格を把握します。
本人の判断能力に不安がある場合は、司法書士や弁護士へ相談し、本人による売却、家族の代理、成年後見制度のうち、どの方法が適しているかを確認する必要性があります。
成年後見制度が必要な場合は、 家庭裁判所へ申立てを行い、後見人などが選任された後に売却活動を進めます。購入希望者が見つかったら、売却条件や売却価格を整理し、居住用不動産に該当する場合は家庭裁判所へ処分許可を申し立てます。
裁判所の許可を得た後、売買契約や残代金決済、所有権移転登記を行います。案件によって手続きの順序や必要書類が異なるため、不動産会社、司法書士、弁護士、家庭裁判所と連携しながら進めることが重要です。
老人ホームの費用を確保するために家を売る場合

認知症の親が老人ホームへ入居する際、入居一時金や毎月の利用料、医療費、介護用品費などを確保するために実家を売却するケースがあります。
売却を検討するときは、現在の預貯金や年金収入、施設費用、将来の医療・介護費用を確認し、売却後にどれだけの資金が必要になるかを整理しましょう。
家を売却してまとまった資金を得られても、売却代金は親本人の財産です。成年後見制度を利用している場合は、本人の生活や介護のために管理・使用します。
もし東京の足立区の老人ホームへの入居をきっかけに実家を売却する場合は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
足立区・北区周辺におけるハウスセイラーズの売却実績

認知症の親の家を売却するときも、法的な手続きだけでなく、不動産を適正な価格で販売することが重要です。
私たちハウスセイラーズが取り扱った足立区周辺の売却実績をご紹介します。
なお、以下は認知症や成年後見制度を利用した案件に限定した実績ではありません。 物件種別や築年数が異なる不動産の成約事例としてご覧ください。
竹の塚ハイツ|1972年築・2LDK・750万円で成約
竹の塚ハイツは、足立区竹の塚4丁目にある1972年9月築のマンションです。専有面積50.22平方メートルの2LDKで、2024年12月に750万円で売り出され、売出価格と同額の750万円で成約しました。
築年数が経過したマンションでも、管理状態や室内状態、周辺の成約事例を確認し、購入対象者に合った価格を設定することで売却につながる可能性があります。
足立区興野2丁目の中古戸建て|2002年築・4LDK・2,530万円で成約
足立区興野2丁目の中古戸建ては、土地面積53.59平方メートル、建物面積92.74平方メートルの4LDKです。
2022年5月に2,880万円で売り出され、2,530万円で成約しました。一戸建ては、築年数や建物の状態だけでなく、土地の形、接道状況、駐車スペース、再建築の可否なども確認して査定します。
足立区東伊興4丁目の土地|107.34平方メートル・3,400万円で成約
足立区東伊興4丁目の土地は、2025年11月に3,500万円で売り出され、3,400万円で成約しました。
土地の査定では、面積だけでなく、間口や土地の形状、前面道路、用途地域、建ぺい率・容積率、境界の状況などを確認します。
古い建物が残っている場合でも、 解体前に土地と建物の両方を調査し、適した販売方法を検討することが重要です。
不動産売却をご検討の方は、私たちハウスセイラーズまで、お気軽にご相談ください。お客様に最適なご提案をさせていただきます。
不動産売却は、ハウスセイラーズにお任せください
もし今、「売るかどうか迷っている」「どれくらいで売れるのか知りたい」など、少しでも不動産売却を意識されているようでしたら、ぜひ一度、お気軽にご相談ください。
無料査定では、売却可能価格はもちろんのこと、「どんな人に・どんな方法で売れそうか」という販売戦略プランのご提案まで含めてご案内いたします。
私たちだからこそ、できる売却があります。
あなたの大切な不動産を、最良のかたちで次の買い手につなげるお手伝いを、全力でさせていただきます。

