「相続登記が未完了のままでも不動産は売却できるのか?」
──相続した不動産を手放そうと考えたとき、多くの方が疑問に思うポイントです。登記手続きが終わっていないと売却が進められないのでは、と不安を抱える方も少なくありません。実際、相続人同士の意見の食い違いや必要書類の準備不足により、売却活動が遅れてしまうケースもあります。
本コラムでは、相続登記が未完了でも売却は可能なのか、その際に注意すべき点やスムーズに進めるためのステップをわかりやすく解説します。
CONTENTS
この記事の目次
- 1. 相続登記が未完了でも売却は可能?
- 1-1. 相続登記とは?基本から押さえておきたいポイント
- 1-2. 相続登記が未完了でも売却は「可能」な理由
- 1-3. よくある誤解
- 2. 相続登記をせずに売却を進めるリスク
- 2-1. 相続登記を後回しにしてしまう背景
- 2-2. リスクを避けるための対策
- 3. 相続登記を完了してから売却するメリット
- 3-1. 相続登記を終えてから売却に進むべき理由
- 3-2. 当社がサポートできること
- 4. 相続登記を未完了のまま売却を検討する場合のステップ
- 4-1. 相続人の確認・合意形成
- 4-2. 必要書類の収集(戸籍・遺産分割協議書など)
- 4-3. 売却の媒介契約と条件整理
- 4-4. 売却活動と並行した登記手続きの進行
相続登記が未完了でも売却は可能?
相続登記とは?基本から押さえておきたいポイント
不動産を相続した場合、まず必要になるのが 「相続登記」です。これは、法務局に申請して不動産の名義を被相続人(亡くなった方)から相続人へ変更する手続きのことを指します。
2024年4月からは相続登記の義務化がスタートし、相続が発生してから3年以内に登記をしなければならなくなりました。正当な理由なく怠った場合には過料(罰金)が科される可能性もあるため、登記の重要性はますます高まっています。
相続登記が未完了でも売却は「可能」な理由
不動産は、登記によって所有権が確定する仕組みになっています。しかし、登記が未了だからといって相続そのものが無効になるわけではありません。相続が発生した時点で、不動産は「相続人全員の共有財産」として扱われます。
つまり、相続登記が済んでいなくても、相続人全員が同意すれば売却手続きを進めることは可能なのです。
たとえば兄弟3人が相続人であれば、3人が揃って売却の意思を示し、必要な書類を整えれば契約を結ぶことができます。
この点は、一般的に誤解されやすい部分です。「登記が済んでいないと売却できない」と思い込み、不動産を長期間放置してしまうケースもあります。しかし、実際には相続人全員の協力があれば、売却することは可能なのです。
よくある誤解
相続登記が未完了の場合の売却に関しては、以下のような誤解が見られます。
売却の進行をスムーズにするために知識を整理しておくことは非常に重要です。
「相続登記が終わらないと売却できない」
前述の通り、相続人全員の同意があれば売却は可能です。
「代表者ひとりが同意すれば売却できる」
これは誤解です。相続不動産は原則として共有財産であり、共有者全員の承諾が必要です。
たとえ一人でも反対する相続人がいれば、売却は進められません。
「一度売却契約を結ぶと、自動的に登記できる」
売却契約後も、所有権移転登記には相続人全員の協力と署名押印が必要です。
契約だけ先に進めても、登記が整わなければ決済・引き渡しはできません。
相続登記が未完了でも、不動産を売却することは可能です。しかし、そのためには相続人全員の同意が必要であり、手続きが煩雑になりやすい点には注意しなければなりません。手続きをスムーズに進めるためには、相続人間での事前の合意形成、司法書士や不動産会社との連携、そして地域に精通した不動産会社のサポートを活用することをおすすめします。
相続登記をせずに売却を進めるリスク
相続登記を後回しにしてしまう背景
不動産の相続が発生したとき、本来であればまず所有権を正式に移転する「相続登記」を行う必要があります。しかし実際には、相続登記をせずにそのまま不動産を放置したり、「とりあえず売却できないか」と考える方も少なくありません。その理由には「登記の費用を抑えたい」「手続きが複雑そうで後回しにしたい」「相続人同士でまだ話し合いがまとまっていない」などがあります。
確かに、相続登記をしていなくても売却は可能です。相続人全員の同意さえあれば契約は成立するため、一見すると「登記は後でよいのでは」と思われがちです。しかし、実務の現場では 相続登記をしないまま売却を進めることには大きなリスクがあります。ここでは代表的な3つのリスクについて解説します。
相続人間でのトラブル発生リスク
相続不動産を売却する場合、相続人全員の同意が必要です。しかし、実際に全員が同じ考えを持っているとは限りません。たとえば「現金化して均等に分けたい」と考える人もいれば、「思い出のある家だから売りたくない」と主張する人もいます。
相続登記をしていない状態では、不動産は 相続人全員の共有財産という扱いになります。つまり、相続人の一人でも反対すれば売却は進められません。売却価格や分配方法をめぐって意見が食い違い、話し合いが長期化することもあります。
さらに、相続人が多いケースや疎遠な親族が含まれる場合は連絡を取るだけでも大変です。連絡が取れない相続人がいると売却の承諾が得られず、事実上売却が不可能になる場合もあります。
足立区や北区でよく見られる複数世代が同居していた地域では相続人の人数が多くなる傾向があり、トラブルが複雑化することも少なくありません。
売却スケジュールが遅れる可能性
相続登記をしないまま売却を進めようとすると、契約から決済までの流れがスムーズにいかないケースが見られます。売買契約を結んだ後でも、最終的に買主へ所有権を移転するためには相続登記が必須だからです。
たとえば、買主が決まり契約を結んだとしても、所有権移転の登記を行う際には「売主の名義が被相続人のまま」では処理できません。そのため、契約後に慌てて相続登記を進めることになりますが、この過程で必要書類の収集や相続人全員の署名押印に時間がかかり、決済が遅れてしまうのです。
特に問題となるのは、買主側の事情です。買主はローン審査や引越しの予定を立てており、スケジュールが大幅に遅れると「不安」を感じやすくなります。その結果、場合によっては契約解除に至ることもあり得るのです。
せっかくの売却チャンスを逃さないためにも、登記は前もって済ませておくことが非常に重要です。
買主側の融資承認が下りにくいケース
相続登記が未了の物件は、買主が金融機関から融資を受ける際に不利になることがあります。金融機関は融資審査の際に 「権利関係が明確かどうか」を重視するため、相続登記がされていない物件はリスクが高いと判断されやすいのです。
たとえば、登記簿上の所有者が故人のままである場合、金融機関は「本当に売主が正当に売却できる権利を持っているのか」を確認しづらくなります。その結果、融資承認が下りるまでに時間がかかったり、最悪の場合審査に通らないこともあります。
また、買主にとっても「本当にこの物件を安全に買えるのだろうか」という心理的な不安が生まれます。初めて住宅を購入する方にとっては、権利関係が複雑な物件は敬遠されがちです。
こうした理由から、相続登記が未完了の物件は市場での評価が下がりやすく、結果的に売却価格にも悪影響を及ぼすことがあります。
リスクを避けるための対策
相続登記をしないまま売却を進めるリスクを避けるには、 登記を先に済ませておくことが最も確実です。登記を済ませることで所有権が明確になり、売却の際に相続人全員の同意を得る手間も軽減されます。
また、売却スケジュールも計画的に進められ、買主や金融機関の信頼も得やすくなります。登記費用や手続きの負担を理由に後回しにする方も多いですが、長期的に見れば早めに対応するほうがリスクを抑えられ、スムーズな売却につながります。
相続登記を完了してから売却するメリット
相続登記を終えてから売却に進むべき理由
相続登記が未完了でも売却自体は不可能ではありません。しかし、実際は相続登記を済ませてから売却を進めるほうが圧倒的にスムーズで、買主にとっても安心できる取引につながります。
ここでは、その具体的なメリットについて解説します。
所有権が明確になり、買主が安心できる
不動産の売買で最も重要なのは 「所有者が誰か」がはっきりしていることです。登記簿上の所有権が故人のままだと、買主は「本当にこの人から購入して大丈夫なのか」「後から相続人が現れてトラブルになるのでは」と不安を抱きやすくなります。
相続登記を完了していれば、登記簿に正式に「相続人Aが所有者」と記載されます。そのため買主は安心して売買契約を結ぶことができ、金融機関の住宅ローン審査もスムーズに進みます。
所有権が明確であることは、売却を成功させるための第一歩なのです。
不動産の価格交渉がスムーズになる
相続登記を済ませていない状態では、売却時に相続人全員の合意を得る必要があり、価格交渉が難航しやすくなります。「少しでも高く売りたい」「早く現金化したい」と相続人の意見が分かれると、売却自体がストップしてしまうこともあります。
一方で、相続登記を完了していれば名義人が明確になり売却に関する決定権が整理されます。その結果、価格交渉を一元的に進められ、買主とのやり取りもスムーズです。
また、相続登記が済んでいる物件は市場での信頼性が高いため、買主側も積極的に交渉に応じやすくなります。売却期間の短縮や、希望価格に近い条件での成約につながることが多いのです。
高確率でスムーズな売却が期待できる
相続登記を完了してから売却を進めることで、全体の流れがスムーズになり、結果として高確率で成約に結びつきます。
当社では、足立区・北区エリアでの売却は売出後半年以内に約90%が成約しており、全国的に見ても非常に高い水準を誇っています。さらに、売出価格と成約価格の平均乖離率は5.3%と低く、市場相場を適切に反映した取引が実現できています。これは相続登記を済ませ、権利関係を明確にしたうえで売却活動を行うことで買主に安心感を与え、無用な値引き交渉を避けられることが大きな要因となっています。
相続登記を完了してから売却を進めることは、単なる手続き上の安心感にとどまらず、 「早期売却」「適正価格での成約」という実務的な成果に直結するのです。
当社がサポートできること
相続登記を完了させてから売却するにあたり、司法書士や税理士との連携が必要になるケースもあります。当社では、信頼できる専門家ネットワークと連携し、相続登記のサポートから売却戦略の立案までワンストップでご提供しています。
さらに、足立区・北区を中心とした地域に密着して30年以上、不動産の専門家として培った経験とデータを活かし、相続不動産の売却を「安心・安全」に進められる体制を整えています。
相続登記を未完了のまま売却を検討する場合のステップ
相続登記が完了していない状態で不動産売却を進めためには、いくつかのステップを慎重に踏んでいく必要があります。
ここでは、相続登記を未完了のまま売却を検討する場合の流れを具体的に解説します。
相続人の確認・合意形成
最初に取り組むべきは、 相続人全員の確認と合意形成です。
不動産を売却するには、所有者全員が売却に同意する必要があります。相続登記を行っていない場合、法的には「相続人全員が共有名義人」という扱いになるため、誰か一人でも反対すれば売却は進められません。
たとえば兄弟姉妹の一人が「まだ売らないでほしい」と主張した場合、話し合いを重ねて合意を得なければ売却自体が不可能になります。逆に、最初に全員の意思を確認し「売却する」という方向で一致できれば、その後の手続きはスムーズに進行しやすくなります。
そのため、まずは戸籍を取り寄せて法定相続人を正確に把握し、全員と連絡を取りながら合意形成を図ることが第一歩です。
必要書類の収集(戸籍・遺産分割協議書など)
相続登記を進めるにあたっては、相続関係を証明するための書類が不可欠です。売却活動と並行して登記を進める場合でも、これらの書類は早い段階で揃えておくことが望ましいです。
具体的には以下のような書類が必要となります。
◾️ 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本一式
◾️ 相続人全員の現在の戸籍謄本
◾️ 相続人全員の印鑑証明書
◾️ 不動産の権利証や登記簿謄本
◾️ 遺産分割協議書(相続人全員が署名押印したもの)
特に遺産分割協議書は、売却に関する合意内容を明確にする重要な書類です。「売却後の代金を相続人間でどう分配するか」まで定めておくと、後々のトラブルを避けやすくなります。
売却の媒介契約と条件整理
相続人全員の合意と必要書類の準備が整ったら、不動産会社と媒介契約を締結します。媒介契約とは、売却活動を不動産会社に依頼するための契約で、専任媒介や専属専任媒介などいくつかの種類があります。
この段階では、以下のような条件を整理しておくとスムーズです。
◾️ 売却価格の希望レンジ
◾️ 売却時期の目安(急ぎか、余裕を持ってか)
◾️ 売却後の代金の分配方法
媒介契約を結ぶことで不動産会社が本格的に販売活動をスタートさせますが、相続登記が未完了の場合は「登記完了が前提」として条件付きで売却活動を進める形になります。そのため、購入希望者への説明も丁寧に行い、信頼を損なわないよう注意が必要です。
売却活動と並行した登記手続きの進行
媒介契約を結んだら、不動産会社による売却活動が始まります。同時に、司法書士を中心に相続登記の手続きを進めることが重要です。
登記手続きは時間がかかる場合が多いため、売却活動と並行して進めておくことで、買主が見つかった際に速やかに引き渡しまで進められます。逆に登記を後回しにすると、買主が決まっても契約や決済が遅れ、取引が流れてしまうリスクが高まります。
特に金融機関から融資を受ける買主にとって、 登記の有無は融資審査に直結します。「登記未了物件は融資不可」とするケースも多いため、売却を確実に成功させるには登記手続きを早めに進めておくことが不可欠です。
相続登記を完了させて、安心・有利な売却を実現
相続登記が未完了の状態でも不動産を売却することは可能ですが、実際には多くのリスクを伴います。相続人同士の合意形成が難航すれば売却が進まなくなったり、買主側の住宅ローン審査が通りにくくなるなど、取引自体が停滞する恐れがあります。そのため、登記を完了させたうえで売却に臨む方が、所有権が明確になり買主からの信頼も得やすく、結果としてスムーズかつ高い成約率につながるのです。
当社は足立区・北区での不動産売却に強みを持ち、相続登記を含めた複雑な案件にも対応してきた実績があります。
売却をお考えの方は、まずはお気軽にご相談ください。